By:DDS 今の憲兵軍装 台湾の憲兵は、全員に憲兵服と野戦服の2種類の服装が支給されている。服装規定は日本の自衛隊と多少違いがあるので、自衛隊の分類と当てはめるのが難しいが、こちらで少し整理しようと思う。 陸海空軍全体 2007年11月29日に陸海空軍の「服装施行規定」が改正された。軍服には軍常服、軍便服、野戦服、その他の4項目に分類され、 それぞれに様式や着用場面が規定され、各軍がこの規定を基づきさらに細かいところを定めることができる。以下はその内容を一部抜粋し示したものである。 (1)軍常服(自衛隊の第一種常装に相当するもの) ① 甲式軍常服:(ボタン背広型、ネクタイ)重要式典 ② 乙式軍常服:(アイゼンハワー・ジャケット、ネクタイ)一般式典/会議/外出 (2)軍便服(自衛隊の第二種、第三種常装に相当するもの) ③ 甲式軍便服:(長袖シャツ、ネクタイ)一般式典/会議/外出 ④ 乙式軍便服:(長袖シャツ)会議/外出 ⑤ 丙式軍便服:(半袖シャツ)会議/外出 なお、季節による着用規定:11月は乙式軍便服、12月から3月までさらにギャバジンジャケット着用;4月から10月までには丙式軍便服。 (3)野戦服(甲式野戦服は自衛隊の乙武装に相当するものと考えられる) ⑥ 甲式野戦服:(迷彩ヘルメット、ピストルベルト、弾薬パウチ、水筒、銃剣、武器、野戦靴)戦闘/演習/訓練/閲兵/勤務。 ⑦ 乙式野戦服:(迷彩ヘルメット、ピストルベルト、水筒、野戦靴)訓練/陣地構築/災害派遣 ⑧ 丙式野戦服:(迷彩略帽、野戦靴)事務/外出/会議/営内日常 (4)その他 作業服、ギャバジンジャケット、コート、レインコート、体育服など。(海空軍は省略) 実際はアイゼンハワー・ジャケットの乙式軍常服が生産され、支給されているのは憲兵隊と国境警備隊に相当する海岸巡防隊のみである。また、 憲兵の甲式軍常服も士官だけが支給され、下士官や兵士にとっての軍常服は一種類のみとされている。 陸軍の場合 一般陸軍の兵士が最前線に配属された場合、または新兵訓練センターにいる時(陸軍と憲兵共)には、野戦服しか支給されていないし、台湾本島の陸軍野戦部隊もほぼ年中野戦服姿で過ごすため、日常の勤務と訓練内容によって野戦服と様々な携行装備を組み合わせた服装を素早く伝える目的で、今まで使われてきた分類が国防部によって以下のように定められている。 全軍適用(国防部の規定であり、憲兵も含まれます): 「甲種服装」:ヘルメット+フール装備+ガスマスク、小銃実弾携行。 「乙種服装」:フール装備+小銃実弾携行(ヘルメットまたは略帽)。 「丙種服装」:フール装備+ガスマスク、武器なし(ヘルメットまたは略帽)。 「丁種服装」:長袖野戦服+略帽+ピストルベルト+脚絆。 「戊(ぼ)種服装」:季節に合うような丙種野戦服。 「己(き)種服装」:体育服 このなか、武器携行のある「甲種服装」と「乙種服装」について、その定義は以下のように定められている。 甲種服装:臨戦体制の命令(訓練・演習を含む)がくだる時。 乙種服装:警戒待機体制。 以上の分類を自衛隊の制服規則に当てはまると、甲種服装は乙武装に、その他は作業服装に相当するだろう。また、自衛隊の甲武装は台湾陸軍にとって、重要式典の観閲式(実際は建国記念日のみ)以外には着用しないと考えられる。 憲兵の場合 上記のもの以外に、憲兵司令部が定めた「憲兵勤務着装規定」により憲兵隊独自の服装規定が以下の通りとされる。 「甲種勤務服」:白いヘルメット、銃実弾携行。(昼:0600~1800) 「乙種勤務服」:ヘルメットカバー付き、銃実弾携行。(夜:1800~0600) と二行しか書かれていない。なお、ヘルメットカバーは常に白い憲兵ヘルメットの裏に収納されており、随時着けられるようにしている。 もともとこの二つとも国防部の定めた「甲種服装」と考えられるが、憲兵隊の場合には憲兵勤務と戦闘任務に正反対の性質(目立つと迷彩偽装)があるため、このような規定が定められたと考えられる。実際に憲兵部隊はこの「甲種勤務服」と「乙種勤務服」を「甲種服」と「乙種服」と略して呼んでいるため、陸軍の「甲種服装」「乙種服装」と紛らわしやすい。その結果、憲兵部隊の現場は以下のような使い分けをしている。 「甲種勤務服」略して「甲種服」とは、一般台湾国民において、憲兵隊の定番イメージであり、自衛隊でいう甲武装に相当する。甲種勤務服は新兵が訓練センターの終了一週間前に支給されるもので、正式の憲兵の一員として認められる終了式の場で初めて着るとされている。基本的にはほぼ儀仗服を着ているため、勤務部隊に配属されてから先輩の厳しいチェックを受け、平均2ヶ月かかって、やっと自分で仕上げられる服装である。なお、任務によって甲種勤務服+軍帽の場合もある。 「乙種勤務服」略して「乙種服」とは一括といえば、戦闘行動に適した服装と考えられ、自衛隊の乙武装に相当する。任務によって憲兵服にするか野戦服にするか、また装着装備などはその場の上官の指示に従い、組み合わせはいろいろある。 現実的に「乙種勤務服」は、地域や勤務によって多少異なる。たとえば、金門島や馬祖など最前線の場合、憲兵隊は昼の憲兵勤務中以外にもほとんど野戦服をベースとした「乙種勤務服」を着ている。台湾本島は逆に、野戦服ベースの「乙種勤務服」は「整訓」中しか着ない。それ以外は軍便服をベースにした乙種勤務服がほとんどである。ちなみに、「整訓」とは憲兵部隊が大隊ごとに年に一回の3ヶ月の駐屯地集中訓練のことであり、特に戦闘訓練が強調され、終了時に賞罰を含めた意味で、検定成績により次の配属地域が決められるものである。 その他の「丙種服装」、「丁種服装」、「戊種服装」は、最前線と集中訓練中以外に、ほとんどは憲兵服をベースとしている。 また、昔の憲兵野戦服はODタイプであるが、現在はすでに生産中止となっている。憲兵の兵站作業は陸軍に依存しているため、迷彩野戦服の支給は陸軍よりたいぶ遅れている。最初は90年代なかばから最前線を優先に支給し始め、台湾本島は一年遅れて支給した。今は憲兵隊全軍に普及している。しかし各連隊にはまた大量のOD服の在庫が残っているために、作業服として使われている。 以上の内容は多数の憲兵OBから聞いた意見を整理したもので、現行する服装規定とは多少ズレがあるかもしれないが、ご参考ください。